制作事例_vol.17|家具工房 鳳山堂|専務取締役 池田 陽子さん
鳳山堂では、一枚板の材料となる原木市場での材の買付から、製材、乾燥、製作、販売、お届けまでをすべて自社で一貫して行う全国でも珍しい工房です。
百年三世代に渡ってお使いいただける、ちょっと自慢したくなるテーブル。時の経過と共に価値の上がる家具。そんな思いを込めて丁寧に一枚板を作っています。
一枚板は乾燥が命。鳳山堂の作品には含水率が表記しています。徹底して乾燥にこだわり、含水率20%以下の材を使用して作品づくりをしています。
何の機材で、何を制作されていますか?
弊社は一枚板を使った家具作りを行っていますが、今回はレーザーカッターを使って自社製品に彫刻を施しました。
木材は余す所なく使える資材です。
長い年月をかけて成長した木を粗末にしたくないという思いが強くあります。乾燥時に割れてしまった板材や、製作過程で生じる端材など、本来なら家具としての商品化が難しい木材も商品にできるよう努力しています。
今回はそのような木材を使った、時計やカットボード、表札などを製作したので、その仕上げにレーザーカッターを使って彫刻をしました。
基本的なデザインは担当する職人さんが主体となって考えますが、製作過程で他のスタッフも知恵を出し合い、より多くの意見を持ち寄って決めていきます。
元々ものづくりの好きな人たちの集まりなので、デザインやアイディアは各々の「作ってみたい」を起点に、より多くの意見を吸い上げ、試行錯誤したものが商品として完成します。
ファブラボを知った経緯を教えてください。
実は弊社にもレーザー加工機があるのですが、突然不具合が起こり、使用できない状況になってしまいました。
そんな時に限って、急ぎの案件が入ってしまい、どこか借りられるところはないかWebサイトを検索していて見つけたのがファブラボやまぐちです。
灯台下暗し、こんな近くにこんな場所が、藁にもすがる思いで早速予約しました。
ファブラボを利用していかがですか?
何よりも急ぎの案件で、納期もタイトな状況だったので、すぐに使えてとても助かりました。
もちろん、自社のレーザー加工機と操作性の面など違いもありましたが、最初にしっかりとレクチャーを受けることができたのでよかったです。
また、時間に追われ、焦っていたときもスタッフの方が丁寧に教えてくださり、納期に間に合わせることができました。
池田さんのものづくりに対する理念や信念・思いとは何ですか?
使っている木材の多くは樹齢の長いものばかりです。常に木材に対して尊敬の念を持って取り組むようにしています。
創業時からの理念としては、木を使わせていただいているという「感謝の気持ち」を大切にし、購入された方の「家宝になるものづくり」を全員がめざしています。
木材に使えないところはありません。
家具に使わなかった部分も全て使い切りたいと考えているので、雑貨製作だけでなく薪や肥料への加工など、幅広い活用を進めています。
今後ファブラボに期待すること、要望などはありますか?
実際に使ってみて、ここはすごく楽しい空間だと感じました。
ものづくりが好きな方の集う空気感、ものづくりを通じて人と人が繋がれる場所だと思っています。
小さな繋がりの連鎖は、さらに大きな繋がりへと成長します。そのためにも手軽に借りられる、ちょっとした困り事に応えてくれる、そういうファブラボの魅力を多くの方に知って欲しいと思います。
鳳山堂はファブラボから車で15分程度と、とても近い場所にあります。
敷地内には事務所と作業場、至る所に大きな木材が積み上げられています。
車から降りた瞬間、爽やかな木の香りに思わず深呼吸。敷地一帯が天然アロマで満たされていて、まるで深い森の中を散策するような気持ちになりました。
池田さんは自社機材のアクシデントからファブラボを利用されたのですが、この偶然から始まったご縁も今ではコラボ商品を製作する深いお付き合いとなりました。いつも明るい池田さんですが、木に対する思いは熱く、木材を「最後の最後まで大切に使う」ことを信条とされています。
鳳山堂は創業54年の老舗家具製作の会社です。
「会社の歴史が長くなるほど、自社の製品や、会社そのもののイメージは確立されます。新しさを失わず、長く続けるためには、その時代に合わせて自分たちも変わっていかなくてはならないと考えています」と話される池田さん。
「常に挑戦者であり続けたい」という言葉には会社の歴史を背負う覚悟が滲んでいました。
また、「ちゃんとしていて当たり前、そこにプラスαが必要、ものづくりが好きな方、木を愛する方ともっと繋がっていきたい、作りたいものはたくさんあるんです」と満面の笑顔で話されていました。
鳳山堂の原点は創業者のワイルド過ぎる買い付けから始まっており、当時は仕入れた木材のサイズや量を見て、どうするの?誰が買うの?と驚くしかない状況の連続だったそうです。時代と共に商品も様変わりしましたが、今は創業時に立ち返り、積極的にワイルドで面白い商品の開発に取り組まれているそうです。商品を一目見て、「何これ」と笑ってもらえるもの、木の魅力を余すところなく表現できる、そんな商品を作りたいと話されていました。
池田さんの木に対する愛と知識は計り知れない深さ、インタビュー中も木への愛着、その良さを広めたいという熱い思いが溢れていました。
木の買い付けからお客様に届けるまで、家具製作の過程、その全てに関わる鳳山堂。木への深い愛に裏付けられた家具。木製ゆえの無骨さと温かさ、その美しさに魅了され、リピーターとなるお客様が多いことを称して「鳳山堂マジック」
言葉のひとつひとつがエネルギッシュでポジティブな池田さん。
ファブラボに来られるたび、私たちも元気を頂き、創作意欲を刺激されています。特にインタビューの最後に話された「木も人肌と同じで木目や表情が全て違い、幾通りもの組み合わせが出来る、永遠に楽しいですね」という言葉に深く感銘を受けました。
池田さん、お忙しい中ありがとうございました。
家具工房 鳳山堂
Webサイト:https://hozando.co.jp/
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