制作事例_vol.14|刀匠 湯川 夜叉さん
2009年、父親の友人である刀匠(松葉國正氏)との出会いがきっかけで弟子入りを許され、5年間の修行を行いその後、防府市の鍛錬所に移る。
2015年、文化庁の主催で行われる「美術刀剣刀匠技術保存研修会」を修了し、刀匠の資格を取得。同年に独立し、主に欧米・ブラジル・日本の顧客に向けて日本刀と包丁の制作を始める。
2021年オリジナルブランド「YASHA YUKAWA」を立ち上げ、新たな包丁および刀の制作に取り組む。
何の機材で、何を制作されていますか?
レーザーカッターを使って玉鋼の包丁を収める桐箱にロゴマークを彫刻しました。
日本刀は白鞘に収めて保管しますが、今回は包丁だったのでオリジナルブランドのロゴマークを入れた桐箱に収めることにしました。
ファブラボを知った経緯を教えてください。
オリジナルブランドを立ち上げる際に、山口県よろず支援拠点に相談に行きました。
そのとき、相談員でもある河口さんからファブラボやまぐちのことを教えていただきました。
以前、山口市内にレーザーカッターが使えるところがあるという話は聞いたことがあったのですが、それがファブラボやまぐちだとは知りませんでした。
工房の立ち上げ当初から、桐箱にロゴマークを彫刻したいと思っていたので、今回それが実現できてとても嬉しかったです。
ファブラボを利用していかがですか?
レーザーカッターを使うまでがとても大変でした。
ロゴは自分でデザインしましたが、手描きだったので、まず山口県よろず支援拠点でデジタルデータにするのをサポートしていただきました。
再度それをレーザーカッター加工用のデータに変換しなければならなかったので、予想以上に時間がかかりました。
制作は大変でしたが、私はファブラボの雰囲気が大好きです。
なかなか操作を覚えることができない私に、スタッフの皆さんが丁寧に、優しく対応してくれたので、それがすごく嬉しかったです。
夜叉さんのものづくりに対する理念や信念・思いとは何ですか?
全ての工程が大切で意味のあるものだと考えています。
日本刀作りは些細なミスがその後の工程に大きく影響します。だからどの工程も大切に、丁寧に取り組まなければなりません。
刀剣はたくさんの繊細な工程を積み重ねて完成するものなので、特に重要な何かではなく、ひとつひとつの小さな過程が全て重要なのです。だから私は、作刀の過程だけでなく、作品を買ってくださるお客様も含めて大切にしています。
それを実現するために、私は常にレベルアップすることを目標に、日々真剣に日本刀と向き合っていくことを心がけています。
今後ファブラボに期待すること、要望などはありますか?
正直、今ある機材で満足しているので、考えたこともなかったですね(笑)
これからはまだ使ったことがない他の機材も利用して、制作の幅を広げていきたいと考えています。
細い山道をしばらく進み、車幅ぎりぎりに狭くなった先に鍛錬所。
薄暗い室内、窓から差しこむ陽光が炭火で赤く染まった火床(ほど)を照らす。
時折激しく美しく火床から湧き上がる火柱、神々しい橙色が照らし出す人が今回の主人公、スウェーデン出身の刀匠、湯川夜叉さん。
日本刀の材料は玉鋼。刀匠しか購入できないため、奥出雲まで直接買い付けに行かれるそうです。その際、製鉄の神様が祀られている金屋子神社にも必ず参拝されるほど筋金入りの刀匠。
刀匠になる前は画家をされてた湯川さん。
日本刀の愛好家だった父親のコレクションを見て、幼い頃から刀剣の美しさに感動し、強い興味を持っていたそうです。
刀匠の道に進んだきっかけは、「光る刀の夢を見たから」という夢のあるお話、神の啓示なのかも。
実際に玉鋼を叩く作業を見学させていただきました。
力強く振り下ろされる槌、その度に響き渡る重厚な金属音。重く、ときに甲高く、リズミカルな槌の音に包まれ赤く丸い玉鋼が徐々に薄く、平らに美しくその姿を変えていく。すっかり魅入られてしまいました。
道具もご自身で作ったもの、修理を繰り返したもの、工程に合う手に馴染んだものを大切に使われています。長い工程を経て誕生した日本刀は、さらに研師、鞘師など、専門の職人が携わるため、完成までに1年以上の時間を要するそうです。
湯川さんは日本刀の魅力をより多くの人に知ってもらいたいという思いから、鍛錬所の見学や、刀剣鑑賞会、ワークショップ等を開かれています。
古い刀だけでなく、現代刀にも興味を持って欲しい、今後はレーザーカッターの最大サイズに合わせてまな板の制作、デジタル刺繍ミシンを使って刀袋にロゴマークを入れてみたいと話されていました。
湯川さんへのインタビューを通じて強く感じたのは、真摯な努力家ということ。
日本刀の魅力を話されるときも、常にご自身の研鑽を忘れない真っ直ぐな姿勢を言葉の端々から感じました。そんな湯川さんが作り出す繊細で美しく、力強い刀剣の数々。それは魂の具現化、唯一無二の一振り、至高の芸術と言えるのではないでしょうか。
湯川さん、お忙しい中ありがとうございました。
湯川夜叉 日本刀鍛錬所
Webサイト:https://yashayukawa.com/
Instagram:@swordsmith_yasha_yukawa
YouTube:@YashaYukawa