制作事例_vol.15|株式会社 萩・森倫館|仁科 勇人さん

株式会社萩・森倫館は、山口県萩市で地域の森や木(木材)を活用する地域商社です。
「森」と「まち」と「人」を繋ぎ、森林・木材の価値を高め、地域資源や経済の循環を生み出すことで持続可能な地域づくりを目指しています。

何の機材で、何を制作されていますか?

レーザーカッターを使って「オフロでサカナツリー」という木製玩具を制作しました。

私が勤めている「萩・森倫館」では、地域の身近な森や木の魅力に触れることで、子どもたちの探究心や豊かな感性を育む「木育」を事業の中で行なっています。今回は遊びを通じて木の面白さを体験してもらうための玩具を制作しました。

「オフロでサカナツリー」は5月に山口市で開催された大型イベント「森フェス」への出展に合わせてお披露目を目指し、開発・製作を行いました。萩産のヒノキを使用したお風呂で釣りを楽しむ玩具なのですが、ヒノキの持つアロマ効果を活かして、遊びながらヒノキ浴も楽しめるという一石二鳥の優れものなのです。

ファブラボを知った経緯を教えてください。

正直、山口市にデジタルファブリケーション施設があることは知りませんでした。

地域の木材を使って子どもが楽しめる商品を企画・検討する中で、木材に手作業では難しい細かくて複雑なデザインを形にしたり、またそれを手軽に量産することができるレーザーカッターを使ってみたいと思ったことがきっかけです。アイテムの正確な試作品が欲しかったこともあり、ネット検索する過程でファブラボやまぐちにたどり着きました。

ファブラボを利用していかがですか?

時間予約の自由度が高く、機材が貸し切りで使える点が良かったと思います。

何より自分の作業に没頭できたのでとても満足しています。
実際に作業を始めると、多くの疑問や機材の不具合、予期せぬトラブルなどが起きることはあります。でも、事前講習も含め、スタッフの皆さんに相談しやすい雰囲気があったので助かりましたし、クリエイティブな方ばかりなので、共感できる部分が多く話していてとても楽しかったです。

デジタルファブリケーションを設備導入しようとすると会社であっても大変な投資になります。だからこそ必要に応じて製作作業ができるファブラボのような利便性が高い施設が身近にあることはありがたいと感じました。

仁科さんのものづくりに対する理念や信念・思いとは何ですか?

私はこの会社に入り、森と暮らしのつながりの重要性や、地域林業の苦しい現状など様々な課題が山積していることを知りました。
時代の流れとともに価値がつかないものとして距離が離れてしまった森の見立てを変えられる創造的目線が今必要になっているように思います。

手触り、重み、香り、木目の表情など、素材の魅力の体感を森のストーリーと共に伝えることで、身近な木に興味を持ってもらえる可能性が高まると思いますし、多くの人が豊かな自然の楽しさを自分たちのライフスタイルに取り入れる機会を増やしていけたら嬉しいです。

地元産業と木の掛け合わせでどのような商品やサービスが生まれるかも、考えるだけで楽しくなってきます!事業者さんと一緒に森に入ることからスタートし、地域の特色を生かしたものづくりをしてみたいですね。
将来的には様々な分野のスペシャリストとの地域連携により商品や空間を作ったり、森のイベント活用など様々な切り口から、すぐ近くに見える山でたくさん育っている地元の木・森が当たり前に使われる風景をつくれたらと思っています。
この地域での日々の暮らしを楽しみ、自分ごとで考え、「好き」を通じて生まれる人の繋がりの中で出来るものづくりを大切にしています。

今後ファブラボに期待すること、要望などはありますか?

木を自由に3Dで削り出してみたいですね。

まだまだ加工技術やツールについて未知な部分が多いので、ファブラボを活用しながらアイディアを具現化する色々な可能性を探れたらいいなと思っています。

人と機械、人と人、多くの掛け合わせが面白い作品を生み出すと思うので、情報交換だけに留まらず、そこから得た情報を広範囲に発信し、更に創造のネットワークを広げていきたいと考えています。

萩・森倫館に伺ったのは5月上旬、細い路地を進んだ先に民家をリノベーションした事務所を発見。裏には川が流れ、緩やかな時間が流れる素敵な場所です。
大きく厚いガラス扉を開けると予想通り、ずしりと重い手ごたえ。室内には落ち着いた色合いの薪ストーブが鎮座しています。壁や床、扉などに使われた無骨な木の風合いは温かみがあり、それでいて凛としたモダンな雰囲気も醸しだしているオフィス内、外観以上に魅力的な空間です。

萩・森倫館は「森とまちと人の有機的つながりによる風土・文化・伝統・技術の継承」というミッションのもと運営されています。
現在、萩市の面積の約8割が森林と言われています。自然豊かな環境ともいえますが、一方では森の資源の有効活用が進んでおらず、地域資源として経済振興に生かされていません。例えば、現代の住宅に使用される木材のほとんどは地元産のものではなく、海外からの輸入品であるという課題があるそうです。
仁科さんたちはそのような現状から、地域産木材の価値を高め流通を促す地域商社としての役割を担う活動をされています。

活動の柱のひとつである「木育」を広めるため、ゴールデンウィークに「第9回 森フェス」にも参加されました。
当日は私たちも取材のため会場に伺いました。ワークショップも兼ねたブースには、前述の「サカナツリー」に興味津々の子どもたちで大盛況。
ウッドバーニングで作るオリジナルの魚、自分の手に馴染むお気に入りの枝を選び釣り竿を制作、どの工程も子どもたちの心を沸き立たせる仕掛けに満ちていました。
魚の型は山陰地方で身近な日本海の魚たちを中心に数種類考えていたそうですが、地元の魚屋さんとの雑談中に「希少な魚を入れたら面白いよ」のひと言から商品開発につながったそうです。それが見事子どもたちのハートをキャッチ、「レアな魚はどれ?」の質問が飛び交い、ブース内のボルテージは更に急上昇。

イベントやワークショップなどの活動以外にも小中学生を対象とした林業学習、基本的な工具で作れる木工キットの制作など、これからを担う子どもたちに向けて幅広い活動を展開中の仁科さん。今後も木育に限らず、地域産木材で空間をコーディネートしたり、大人も子どもも森に入ってみたくなる場所や機会を作り、流れが滞っていた「森の出口」になれるような活動を広げていきたいと話されていました。
森倫館の活動を通じて、地域の森や木への愛着や可能性を感じてもらい、林業に関わらず様々な分野から森に関わる仲間・ネットワークを作っていくことで、森と共にある暮らしが日常になっていくことを目指しているのだそうです。

木のぬくもりの良さ、触れてみて、使ってみて伝わる木の魅力、森フェスや仁科さんへの取材を通して、木に触れ自然を満喫することの楽しさを改めて感じることができました。
森は特別な場所です。人が集まり楽しめる場所、癒される場所、森は多くの可能性と魅力に満ちていると感じました。

仁科さん、お忙しい中ありがとうございました。

萩・森倫館
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