制作事例_vol.16|有限会社 FirstClass|明日香健輔さん・らくさん親子

株式会社Roidを経て、2002年(有)First Classを設立。ゼンリン地図システムのPDA版開発、セルシス社と共同で携帯端末向けコミックビューワ開発。その後渡米し、Amp’dモバイル(MVNO)向け携帯端末のUI開発指揮。2007年本社を山口に移転後、パイオニア社のサイクリングナビの企画・開発を行う。現在は、地元地域で田舎アプリの企画および開発に携わり、2009年より廃校利用による阿東文庫の運営に参加。

何の機材で、何を制作されていますか?

健輔さん:

レーザーカッターと3Dプリンターを使って「トイトイスイッチ」のプロトタイプを制作しました。

「トイトイ」というのは、山口県阿東地域の買い物支援対策や地域コミュニティの拠点となる「ほほえみの郷トイトイ」のことです。

トイトイでは買い物支援対策として移動販売を行っていますが、そのサービスを利用される方がトイトイに「今日は来なくていいよ」という意思をボタンひとつで連絡できる仕組みになっています。
利用される方はご高齢の方が多いので、できるだけ簡単に使える仕組みを考えました。

ファブラボを知った経緯を教えてください。

健輔さん:

ファブラボやまぐち自体は設立当初から関わりがありました。

10年以上前になりますが、当時全国的にファブラボを作ろうという流れがあり、その経緯で山口市役所を中心にファブラボを設立することになったのです。

半年以上かけて立ち上げから運営に関する構成など、私はアドバイザーという形で関わっただけですが、河口さんの取り組みは間近で見てきたので、その大変さもよく知っています。

だから、ファブラボを知ったというよりは知っていたという方が正しいですね。

ファブラボを利用していかがですか?

楽さん:

自分たちで試行錯誤して作った図面をもとに、自分たちで機材を使い、その場でトライ&エラーを繰り返して完成させる、その過程がとても良かったと思います。

工具や作業台など、作業スペース全体がコンパクトまとまっている点も良かったですし、材料の購入も可能だったので大変便利でした。

落ち着いた雰囲気の中で、作業にも集中しやすくスタッフの皆さんの対応も親切で素晴らしい環境でした。

健輔さん:

大殿地区の歴史的な雰囲気、古民家ならではの落ち着いた空間の中で作業することができてとてもよかったです。

またスタッフの皆さんが細かいところまで迅速に対応していただけたのでスムーズに作業を進めることができたので助かりました。

明日香さんのものづくりに対する理念や信念・思いとは何ですか?

楽さん:

ユーザーの目線に立って考えること、できるだけシンプルに作るようにしています。

健輔さん:

ユーザーインターフェースにこだわり、マニュアルがなくても直感で使い方がわかるように心がけています。

今回「トイトイスイッチ」を制作して感じたのは、ご高齢の方は、制作側が想定しない小さな困り事や気になる点が多いということです。利用者と対話してみて初めて気付かされることが多々ありました。
その経験から、高齢者目線の「使いやすい」「分かりやすい」「見やすい」「聞きやすい」デザインづくり、よりユーザー目線で考えながら製作していきたいと思っています。

今後ファブラボに期待すること、要望などはありますか?

健輔さん:

10周年を迎えたファブラボやまぐちをさらに10年、20年と頑張っていただきたいということ。
山口ならではのファブラボのあり方を一緒に考え連携していきたいです。

撮影日程を調整するため、楽さんが講師として参加されている中学校の発表会(オープンデー)に伺いました。
楽さんは、「お年寄りも楽しめるゲーム作り」をテーマに、リサーチから仕様書作成、プログラミングまで中学生のサポートされていました。

当日は、生徒が企画運営したイベントを、保護者はもちろん、地域の方々もいっしょに楽しんでいる光景が印象的でした。
私も生徒考案の「迷路ゲーム」を体験してみましたが、結構難しく、悪戦苦闘の末なんとか時間内にゴールすることができました。
ゲームはマイクロビットという小さな基盤を使って作られていますが、実際にプログラミングに費やしたのはわずか3時間、中学生ならではの自由な発想とプログラミング能力の高さに驚かされました。

楽さんは来年もこの授業に参加されることが決まっていて、今度はプログラミングだけでなく、筐体も生徒と一緒に作ろうと考えておられるそうです。

また、プログラマーである明日香さんは、地域ならではの困りごと解決に役立つものを作りたいと話されていました。

今回制作した「トイトイスイッチ」のほとんどが100円均一など、身近に入手できるものを材料にし、かなり低コストで作られています。
ユーザーがいかにストレスなく使えるか、このスイッチもユーザーの動作が最小限になるよう工夫されており、(システム提供する)メーカーにも高評価だったそうです。

築65年以上の古民家を改装した事務所兼ラボは様々な方が行き来できる自由な場を目指しており、定期的にプログラミング勉強会を開催するなどの取り組みをされています。その活動を通じて参加者が互いに「教え合いから学ぶ環境」が育ってきたそうです。

First Classは子どもと大人が世代を超えてつながり、ものづくりできる場所、大手メーカーでは対応できない小さな困りごとの解決に向けて地域を巻き込んだ活動の拠点にすることが明日香さんの目標だそうです。
私もFirst Classとファブラボが連携した新たな創作が実現することを願っています。

現在、息子の楽さんは県外でエンジニアとして武者修行中とのこと。
それが新たな地域の困りごと解決策につながると期待しています。

明日香さん、楽さん、お忙しい中ありがとうございました。