制作事例_vol.8 |murmur|服飾作家 田村 真子さん

murmurは 「躍るように暮らす」をテーマに飲食店、サロンのスタッフエプロンなど、日々の暮らしに寄り添えるようなエプロンや服、小物などオーダーメイドを中心にお作りしています。

何の機材で、何を制作されていますか?

デジタル刺繍ミシンを使ってロゴ刺繍をしています。

企業や店舗などのスタッフエプロンからご家庭で普段使いするエプロンまで、オーダーメイドを中心に制作をしています。
今回はまつ毛エクステサロンの方から、スタッフ用エプロンの制作依頼を受けたのでデジタル刺繍ミシンを使って、胸元に店名を刺繍しました。

ファブラボを知った経緯を教えてください。

初めはロゴ刺繍を外注しようと思い尋ねたところ、納期に時間がかかると聞き、どうしようか悩んでいました。
以前から親しくしていただいているアトリエa.p.rの片山さんに相談したところ、お店の向かいにあるファブラボさんを紹介していただきました。

ファブラボを利用していかがですか?

私はデジタルデータを扱うのが苦手なので、ミシンにデータ移行する作業に苦戦しました。でも、ファブラボのスタッフさんからサポートを受け、練習と失敗を繰り返しながら奮闘し、慣れるとスムーズに仕上げることができました。

困ったときはスタッフさんにすぐ聞くことができるので安心して作業に集中でき、エラーが起きたときや作業が頓挫したときは親身に接してくださり、分かりやすく解決策を教えていただいたので本当に助かりました。
私が集中している時や、納期間近でピリピリしていたときも、制作に集中できるように気を配っていただいたので、マイペースで良い時間が過ごせました。

田村さんのものづくりに対する理念や信念・思いとは何ですか?

私は、常にお客様が求めているものをしっかり把握したいと思っています。
その点からも、お客様とのカウンセリングを一番大切にしています。

私はエプロンを通してその方の暮らしが1%でも楽しくなればいいなと思っています。
ただ、楽しさのあり方は人それぞれなので、「どのようなものが好きか、どのような瞬間を幸せと感じるのか」など、細かく対話しながら、そこで得たイメージをエッセンスにデザイン画を起こし制作を進めています。なので、基本的な型紙はありますが、お客様のご要望に合わせて細かく調整しています。お客様の思いと同じ数だけ型紙があると考えています。

今後ファブラボに期待すること、要望などはありますか?

私はデザイン画もスケッチも、ずっと手描きなので、それをデジタルデータに変換することに少し苦手意識があります。
だから、ファブラボさんでデジタルデータ作成のワークショップなどあればいいなと思っています。今回のようにデジタルの力を借りないと想いが形にできないこともあるので、ぜひそのような機会をつくっていただけたらと思っています。

自宅兼アトリエのmurmurさん。
元は差し掛けだった場所を改築されたアトリエには、たくさんの布や道具が綺麗に整頓されていて、とても居心地の良いワークスペースでした。

田村さんの裁縫の原点は子供の頃に作った人形の服。そのせいか大学進学後は服飾の勉強に没頭され、最初は煌びやかなステージ衣装に魅了された田村さんでしたが、「日々の暮らし」という身近なステージに気づき、暮らしを演じる衣装としてエプロンを作りたいという思いが湧いてきたとのこと。
オーダーを受ける際は、依頼者の仕事やライフスタイル、次に立ちたいと思っている「人生のステージ」などをベースにデザインを考えるそうです。
しかし、予算や求められる機能など、細かな制約の難しさもあるため、なかなか思い通りにはいかないこともしばしば。でも、その難しさを乗り越える過程がいちばん楽しいと笑顔で話されていました。

型紙はあってないようなもの、紐の太さ、前縦の広さなど、依頼者の要望に合わせてカスタマイズしていきますと話される田村さん。そのこだわりは本物で、生地見本にオーダーと合うものが無ければメーカーから更に取り寄せ、「あなただけの一点」を依頼者と一緒に作り上げることを大切にされています。
ご自身が選んだ素材へのこだわりも強い方で、生地が暮らしの中でどう変化するのか、少しでも細かく感じ取れるように実験を続けているそうです。洗濯や擦れによる摩耗、シワのでき具合など、数々の試みを繰り返す正真正銘プロ意識の塊です。
それだけに、購入されたお客様にはリピーターが多く、一度購入された方から、プレゼント用にと追加オーダーを受けることも少なくないそうです。

そんな田村さんの探究心は留まることを知らず、オリジナルの刺繍を施したテキスタイルやボタンなど、より一層細部にこだわった一着を作りたいと話されていました。
今後は「エプロンのある暮らし」が見える展示会や、屋外で飲食店とのコラボイベントなどにも挑戦し、エプロンの魅力を発信し続けたいと話されていました。

田村さんが考え抜いて作った「私だけのエプロン」
それは着心地、使い心地だけでなく、台所の隅に掛けてあるだけで絵になり、使う人の心まで高める、文字通りこだわりの詰まったアート作品です。

インタビューの最後に、ミシンで真っ直ぐ縫うコツをお聞きしたところ「精神を整えること、写経と同じです!」と、求道者の田村さんらしいお言葉をいただきました。
田村さん、お忙しい中ありがとうございました。

murmur(マーマー)
Instagram:@murmur_sewing