制作事例_vol.11 |冨本 浩一郎さん・ 和橘にきくん親子

何の機材で、何を制作されていますか?

和橘くん:

3Dプリンタとレーザーカッターを使って、自由研究の作品を作りました。

小学校5・6年生の夏休みの課題制作のために機材を利用し、そのとき作ったのは僕が考えた「ポテチトレール」というポテトチップス専用トングです。

5年生の時は、トングの一部を3Dプリンタで作りました。6年生ではレーザーカッターと3Dプリンタの両方を使い、作品をバージョンアップさせました。

ファブラボを知った経緯を教えてください。

浩一郎さん:

商店街に出かけた時に見かけたのが最初でした。

その後、山口情報芸術センター[YCAM]のワークショップに参加した際に、ファブラボのスタッフも兼任されていた田吹さんに詳しく教えていただきました。

私は大学に勤めているので、学生と一緒に見学に行き、個人的にも通うようになりました。

仕事の関係で2015年に山口市に来たのですが、ちょうど3Dプリンタなどのデジタル工作機械が普及し始めた時期でした。
私自身ものづくりが好きで、プロダクトデザインを手掛けていたこともあって、デジタル工作機械にはすごく興味がありましたが、なかなか触れる機会がなかったので、ファブラボのような施設が身近にあることを知ったときは嬉しかったですね。

ファブラボを利用していかがですか?

和橘くん:

3Dプリンタの使い方に不安がありましたが、スタッフの方が優しく教えてくださったのでスムーズに作業できました。それでも、思い通りにはいかないことが沢山あって、結構苦労しました。

浩一郎さん:

機械の操作自体は私が教えることもできたのですが、普段接していない方から教えて頂く方がよいと思いました。

だから私は口も手も出さず、息子には自分でチャレンジさせることにしました。実際にスタッフの皆さんは雑談も交え丁寧に教えてくださいますし、リラックスして取り組めたようです。

また、ファブラボが醸しだす雰囲気も固いマニアックなものではなく、どちらかというとアットホームで柔らかく、とても立ち寄よりやすい感じなので気に入っています。

冨本さんのものづくりに対する理念や信念・思いとは何ですか?

浩一郎さん:

ひと言で言えば「こだわる」ことですね。

私は最後まで、ギリギリまで、こだわり抜いて作るようにしています。

学生に課題を出すと、期限よりも早く完成させて提出する学生がいます。もちろん提出期限を守ることは大切ですが、細部まで検証したか、もっと改善できるところはないかと、必ず尋ねるようにしています。

私のこだわりの根底には、「好き」という感情があるのだと思います。つまり、こだわりの時間こそが制作の楽しみであり、創作のモチベーションなのだと思います。だから常にその気持ちを大切にしています。

今後ファブラボに期待すること、要望などはありますか?

浩一郎さん:

ファブラボは様々なスキルや興味・関心、多様な才能が集まる場所だと思います。だから、ものづくりの場としての機能だけでなく、お互いにサポートし「相互作用」が起きる場所になればといいなと思っています。

ファブラボがドラゴンクエストに登場する「ルイーダの酒場」のように、職人が集う場所になるといいよねと、河口さん(ファブラボやまぐちの代表)と話したことがあります。

自分が作りたいものを実現するパーティが組める、自分1人では難しいこともファブラボに行けば一緒にやってくれる人がいる、そんな場所になって欲しいですね。

冨本さんは以前、ものづくり体験施設「VIVISTOP」に息子さんと一緒に通われていたそうです。ファブラボにも息子さんの自由研究がきっかけで来所されるようになりました。

課題制作では、データ作りから完成まで、和橘くんが父親のアドバイスを受けながら自分で頑張っておられました。組み合わせ計算などの繊細な作業も根気強く取り組まれ、その成果は2年連続で山口市の児童科学作品展に入選、特に2年目は山口県の科学作品展の佳作というかたちで結実しました。

今年中学生になる和橘くんの一番の興味はサッカーだそうですが、ものづくりへの興味も衰えることなく、より多くの創作を通じて、ユニバーサルデザインの分野に挑戦していきたいと話されていました。

ファブラボでは以前、冨本さんがお勤めの大学の学生さんたちが制作された作品を展示したことがあります。その際、来場者がコメントを書くためのノートを置きました。

冨本さんは、学内の評価だけでなく、外部評価を得ることも大切と考えておられ、今後もこのような取り組みは積極的に行いたいと話されていました。

今回、話をお聞きし冨本さん親子は同じものづくりのゴールを目指すパーティ、仲間なのだと感じました。和橘くんの成長と共にバージョンアップする作品にも注目です。

冨本さん、和橘くん、お忙しい中ありがとうございました。