制作事例_vol.13 |ミュージシャン 一楽 儀光さん

2012年長年プロとして活動してきたドラムを引退。その後tkrworks社と長年開発を進めて来た映像と音楽をリアルタイムにリミックス出来る自作楽器「DORAnome」により活動を再開。既製の楽器ありきの音楽では無く楽器自体から自分自身の音楽専用に一から作り上げるというコンセプトにより圧倒的な個性と唯一無似な世界観で活躍中!

現在はモジュラーシステムによるレーザー、LEDコントロールシステムによるライブ・ワークショップを世界中で展開。その他にもテレビ・CM・映画出演、執筆活動なども盛んに行っている。

何の機材で、何を制作されていますか?

レーザーカッターを使ってモジュラーシンセのパネルを作りました。

モジュラーシンセというのは、モジュールが持つ各機能をパッチケーブルで繋ぐことによって自由な音作りが楽しめる電子機器です。市販もされていますが、それだけでは自分のやりたい表現ができないので自作しています。

今回はそれに合わせたパネルを制作しました。

ファブラボを知った経緯を教えてください。

仕事仲間の山口情報芸術センター(以下YCAM)の方に紹介していただいたのがきっかけです。

以前はYCAMにパネル制作をお願いしていましたが、私自身ものづくりが好きなので制作方法を尋ねたところ、レーザーカッターを使って制作していると教えてもらいました。そこでファブラボやまぐちのことも紹介していただきました。

それからは自分でパネルを制作するようになりました。

ファブラボを利用していかがですか?

初めて知った時は驚きました。

実際に利用してみるとスタッフの皆さんは親切ですし、何よりパネルの仕上がりがキレイなのでとても満足しています。

データ作りも含め制作自体は問題なかったのですが、時々行き詰ることもあり、そんな時はスタッフの皆さんのサポートが助けになりました。たくさんの失敗から気に入る1枚ができる過程が嬉しくて、とても楽しく作業できました。

私にとってファブラボは、便利なだけでなく気軽に立ち寄れるアットフォームな場所です。

一楽さんのものづくりに対する理念や信念・思いとは何ですか?

自分は純然たるミュージシャンではないので、たくさんの人と一緒に音楽や楽器を作っています。

ただ、全てをメーカー任せにしてしまうと、設計図だけでも半年以上かかってしまう場合もあります。制作が長期間になると、自分が本当にやりたかったことを見失ってしまうため、「自分で作れるものは自分で作ろう」と考えるようになりました。

もちろん失敗も多々ありますが、やり直すたびに完成度は上がりますし、何よりアイディアが短時間で具体化されることが楽しいと感じています。

私は音楽活動だけでなく、面白いこと、楽しいことにはどんどんチャレンジし、関わっていきたいと思っています。

今後ファブラボに期待すること、要望などはありますか?

「変な機械をたくさん入れて欲しいですね」

基盤が作れる機械や大判印刷に対応したシルクプリントなどあると面白いですよね。
あとは、新しいガジェットを色々触ってみたいので、たくさんあると嬉しいです。

昨年1月、萩市で開催されたライブツアーに撮影もかねてお邪魔しました。
会場は幅広い年齢層のファンで満員、ステージと客席の隔たりがなく、迫力あるパフォーマンスと和やかな笑いに満ちた楽しいライブでした。

毎回共演者との打ち合わせは一切行わず、何も決めずにステージに上がる、即興セッションでのライブ。その理由をお尋ねすると、「記憶で音楽をやるようになると、いい音楽をやっても飽きてしまうから」とのこと。一年の大半をライブ活動で過ごされている一楽さんならではのお答えにしっかり納得しました。

ものづくりもお好きな一楽さん。機材用のパネルやライブで使う楽器を自作されています。
世界中のファンから送られてくる楽器も多くあるそうで、それらを実際にライブで演奏し、SNSで発信する。その活動が送ってくれた人の喜びにつながり、その人たちの仕事に繋がっていく、そんなウェルビーイングな関係性を大切にされています。

普段は優しく穏やかな方ですが、一転、ステージ上では激しくパワフルなアーティストへと変貌します。とにかく面白いことが大好き、普段もライブ中も面白いこと、楽しいことを体感し発信し続けたいと話されていました。
ドクターストップがかかっているドラム演奏も今回のライブツアーでは解禁。2分間限定という厳しい条件下での演奏を聴けたのはとてもラッキーでした。

今後はデジタル刺繍ミシンを使ってワッペン(ツアーグッズ)を作ってみたいと話されていました。その理由は、ハードコア(という音楽ジャンル)のミュージシャンたちの間で流行っているからだそうです。
とにかく音楽が好き、面白いことが大好きな一楽さん。高い音楽性と極限までのオレジナリティへのこだわり、そんな一楽さんの今後の活動に注目必至。

一楽さん、お忙しい中ありがとうございました。

一楽 儀光
Instagram:@doravideo_modular
X:@doravideo